人を動かす講座(カーネギーの原則を、小さな会社の現場で使う)
区分2 好かれる人になる★★★人は誰でも、自分には価値があると感じたいものです。 大切にされている感覚とは、その気持ちが、ある相手との関わりの中で満たされている状態のことです。
この感覚は、こちらが「大切にしている」と思っているだけでは生まれません。 相手がそう感じて、はじめて成り立ちます。
混ざりやすい物が2つあります。
おだてるのは、相手をいい気分にさせて、こちらの得につなげようとすることです。 言葉は甘くても、相手を道具として見ています。 こうした「ふり」は、いずれ見抜かれて逆効果になります。
特別扱いは、ある人だけを他の人より優遇することです。 大切にするのは、優遇ではなく、一人ひとりを軽く扱わないことです。 誰か1人を持ち上げて、他の人が軽く扱われたと感じるなら、それは原則から外れています。
お金や時間がほしい気持ちとは別に、人には「自分は大事にされたい」という気持ちがあります。 ご利用者さんも家族スタッフも、外注さんも子どもも同じです。
相手が「自分は大事にされている」と感じると、人は自分から力を出したくなります。 区分2のここまでの原則は、全部この気持ちに応えるためのものでした。
大切にしている気持ちは、言葉より、日々の扱いで伝わります。 具体的には、次のような小さな事です。
どれも特別な事ではありません。 だからこそ、続けているかどうかがそのまま相手に伝わります。
お客さんや取引先には、自然とていねいに接する人が多いです。 崩れやすいのは、家族スタッフや家族のように、毎日会う身内です。
身内には甘えが出て、約束を後回しにしたり、意見を聞かずに決めたりしがちです。 立場が下の人や身内ほど、「当たり前」にしていないかを意識して見直します。
大事にされていると感じると、人は「この人のためなら」と思えるようになります。 頼まれた以上の事を、自分から進んでやりたくなるのです。
これは、命令や理屈では生まれない動きです。 講座のゴールにある「相手が自分から動く」は、この気持ちが土台にあります。
反対に、軽く扱われたと感じた人は、頼みの中身が正しくても動きにくくなります。 頭では分かっていても、気持ちがついてこないからです。
人は理屈より先に、気持ちで動きます。 区分1で学んだこの前提は、ここでも同じです。
大切にしている気持ちは、1回の大きな贈り物では伝わりきりません。 特別な日だけていねいで、普段は軽く扱っていると、相手は普段のほうを本当の姿だと受け取ります。
本気の気持ちは、続けることでしか示せません。 ふりで始めたものは長く続かないので、続いていること自体が本気の証になります。
事業所で、訪問の順番を組み直すことになりました。
ダメな決め方: あなたが1人で決めて、朝の申し送りで「来週からこの順番でお願い」と伝える。
言い換え: 決める前に、家族スタッフのAさんに「訪問の順番を変えようと思ってるんだけど、Aさんから見て無理がある所はある?」と聞く。 Aさんの意見を採らなかった時も、「今回はこういう理由でこっちにした。言ってくれて助かった」と伝える。
意見を採用するかどうかより、聞かれたかどうかが大事です。 聞かれた人は、決まった事を「自分たちで決めた事」として受け取れます。
訪問介護で、ご利用者さんの着替えを手伝う場面です。
ダメな関わり方: 時間がないので、ヘルパーが服を選んで「はい、これ着ましょうね」と渡す。 本人の前で、ご家族とだけ「今日はこれでいいですよね」と話を進める。
言い換え: 「今日はどちらの服にしますか」と、2つ見せて選んでもらう。 ご家族と話す時も、ご本人に顔を向けて「〇〇さん、それでいいですか」と確かめる。
自分の事を自分で決められることは、その人の尊厳そのものです。 できる事を本人に任せるのは、手間ではなく、大切にしていることの表れです。
AIコンテンツの表紙を、外注のデザイナーさんに定期的に頼んでいます。
ダメな扱い: 納品物への返事が数日遅れる。 支払いは月末にまとめて、たまに遅れる。 連絡は修正の指示だけ。
言い換え: 納品を受け取ったら、その日のうちに「受け取りました。ここの色づかい、すごく良かったです」と返す。 支払いは約束の日より前に済ませる。
外注さんにとっては、「数ある取引先の1つ」から「大事に扱ってくれる相手」に変わります。 そう感じた相手は、急ぎの仕事も気持ちよく受けてくれるようになります。
家庭では、妻がしてくれている家事や子どもの世話が、いつの間にか当たり前になっていないでしょうか。
言い換えは、当たり前に見える事ほど言葉にすることです。 「毎朝お弁当を作ってくれてありがとう。おかげで昼にちゃんと食べられてる」と、何に助かっているかまで添えます。 大げさな贈り物より、こうした一言を続けるほうが届きます。
○ よくある勘違い:相手を大切にする=何でも言うことを聞く、ではありません。断る事や注意する事があっても大丈夫です。相手の話を聞いて理由を伝え、軽く扱わなければ、大切にしていることは伝わります。注意の仕方は区分4(後で出ます)で扱います
○ 関係する単元:No.02 心から認めて言葉にする(感謝を伝える時は、具体的な行動を言葉にします)
今日、身内か立場が下の人を1人選びます。 その人がしてくれていて、当たり前になっている事を1つ見つけます。
見つけたら、何に助かっているかを添えて、感謝を1回言葉にします。 例:「Aさん、毎日記録をきちんと書いてくれてありがとう。おかげで、ご家族に聞かれた時にすぐ答えられるよ」
区分2では、関心・笑顔・名前・聞く・話題・大切にする、の6つを学びました。 毎日1つずつで十分です。
振り返りシートに、今日使った原則の番号を書いてみてください。 1つの場面で、いくつかの原則が自然に重なっていることに気づくと思います。
人はみな「自分は大事な存在だ」と感じたい。大切にしている気持ちは、約束を守る・意見を聞く・感謝を言葉にする、という日々の扱いで伝わる。身内ほど「当たり前」にしない。
問1 事業所で訪問の順番を組み直すことになりました。この回の原則に沿った決め方はどれですか。
問2 ご利用者さんの着替えを手伝う時間が、あまりありません。この回の考え方に近い関わり方はどれですか。
問3 外注のデザイナーさんに、ていねいな言葉で連絡はしていますが、支払いがたまに遅れています。この回の説明に合うものはどれですか。
問4 相手をいい気分にさせて、こちらの得につなげようとするほめ方について、正しい説明はどれですか。
出典:D・カーネギー『人を動かす』の原則(「重要感を与える」)をもとに、独自の言葉と例で再構成。例はすべて架空です。