人を動かす講座(カーネギーの原則を、小さな会社の現場で使う)
区分2 好かれる人になる★★★会話には、話す人と聞く人がいます。 聞き手にまわるとは、相手が話す時間を多くして、自分はその話を受け止める側に立つことです。
たとえるなら、キャッチボールで相手に多く投げてもらう役です。 自分が投げたい球を投げ続けるのではなく、相手の球を受けて、投げやすい所に返します。
聞き手は、ただ黙っている人ではありません。 相づちを打って続きを促し、聞いた事をまとめ直して、話を前に進めます。
また、聞いているふりとも違います。 相手が話している間に、次に言う事や反論を考えている状態は、聞いているように見えて聞いていません。 聞き手にまわるとは、相手の話を最後まで、相手の側に立って受け取ることです。
会話のあとで、自分と相手のどちらが多く話していたかを振り返ってみてください。 特に経営者や上の立場の人は、気づくと自分ばかり話していることがあります。
目安は、相手が話す時間のほうを長くすることです。 自分が話したくなったら、「それで、どうなったの?」と相手に戻します。
聞く時にいちばん崩れやすいのが、途中で口を挟むことです。 相手の話の結論が見えた気がすると、つい先回りして答えを言いたくなります。
でも、途中で挟まれた相手は、「最後まで聞いてもらえなかった」という気持ちだけが残ります。 しかも、先回りした結論が外れていることも少なくありません。 相手が話し終わるまで待つ。言いたい事は、その後でいい。 これを覚えておいてください。
黙って待つだけでは、相手は話しにくくなります。 聞き手が使う言葉は、大きく2種類です。
最後の「つまり、〜ということ?」は、聞いた事を自分の言葉でまとめ直すものです。 ずれていれば相手が直してくれるので、誤解も防げます。
人は、自分の話を最後まで聞いてもらうと、自分ごと受け入れてもらえたと感じます。 話の中身に賛成されなくても、聞いてもらえたこと自体が安心になるんです。
反対に、途中でさえぎられたり聞き流されたりすると、話の中身ではなく自分が軽く扱われたと感じます。 その気持ちは、その後に何を言われても残ります。
困り事を話しているうちに、相手のほうから「あ、こうすればいいのか」と言い出すことがあります。 話すことで、頭の中が整理されるからです。
自分で出した答えには、人は納得して動けます。 相手に話してもらって考えを相手のものにする原則は、詳しくはNo.13(後で出ます)で扱います。 ここでは、聞くことで相手が自分で気づく余地が生まれる、とだけ覚えておけば大丈夫です。
相手の最初のひと言は、話の入口にすぎないことがよくあります。 「ちょっと疲れた」の奥に、ご家族との関係の悩みがあったりします。
途中で答えを出してしまうと、入口の話にだけ答えることになります。 最後まで聞くと、本当に手を打つべき所が見えてきます。
家族スタッフのAさんが、訪問から戻ってきて言いました。 「〇〇さんのご家族に、また掃除のやり方のことを言われて……」
ダメな聞き方: 「ああ、あのお宅ね。それはこう言えばいいんだよ」と、話の途中で答えを出す。
言い換え: 最後まで聞いてから、「それはしんどかったね。どんなふうに言われたの?」と続きを促す。 話し終わったところで、「つまり、やり方より言い方がきつかったのがつらいってこと?」とまとめ直す。
Aさんが欲しかったのは、言い返し方ではなく、分かってもらうことだったのかもしれません。 アドバイスが要るかどうかは、聞き終わってから「何か手を打とうか」と聞けば分かります。
ご利用者さんが、若い頃の仕事の話を、前にも聞いたことのある内容で話し始めました。
ダメな受け方: 「その話、この前も聞きましたよ」と言う。 あるいは、作業をしながら生返事で受け流す。
言い換え: 手が止められる場面なら手を止めて、「その時は、いちばん何が大変でしたか」と前回とは違う所を聞く。
同じ話でも、その人にとって大事だから何度も話すのだと受け止めます。 新しい問いを1つ加えると、前に聞いた話から知らなかった一面が出てくることもあります。
レンタルスペースの利用者さんから、「隣の部屋の音がうるさくて練習にならなかった」と連絡がありました。
ダメな受け方: 「うちは防音していますし、時間帯によっては多少は……」と、すぐに説明を始める。
言い換え: 「せっかくの練習の時間に、申し訳ありませんでした。どの時間帯で、どんな音でしたか」と、まず聞く。 聞き終わってから、こちらでできる事を伝える。
説明が正しくても、先に言うと言い訳に聞こえます。 聞き終わった後の説明なら、相手は耳を傾けてくれます。
子どもが学校であった事を話し始めた時、スマホを見ながら「へえ」と返していないでしょうか。 子どもは、親が自分の話を聞いているかを、顔の向きで感じ取ります。
言い換えは、スマホを置いて、顔を向けることです。 「それで、どうなったの?」と1回だけ続きを聞きます。
○ よくある勘違い:聞き手にまわる=自分の意見を言わない、ではありません。意見は、相手が話し終わって「聞いてもらえた」と感じた後に言えばいいんです。その時のほうが、意見もずっと届きます
○ 関係する単元:No.04 相手に本気で関心を持つ(関心がないと、聞く姿勢は長く続きません)
今日1回、誰かの話を、相手が話し終わるまで口を挟まずに聞きます。 話し終わったら、「つまり、〜ということ?」と1回だけまとめ直します。
相手は家族スタッフでも、妻や子どもでも構いません。 口を挟みたくなった時は、心の中で「今は聞く番」と言って待ちます。
振り返りシートの「やってしまったこと」の欄に、途中で口を挟んだ回数を正直に書きます。 「相手の反応」の欄には、まとめ直した時に相手がどう返したかを書いてください。 「そうそう」と言ったか、「いや、そうじゃなくて」と直したか。 どちらでも、聞けている証拠です。
相手が話す時間を長くする。話し終わるまで口を挟まず、最後に「つまり、〜ということ?」とまとめ直す。意見は、その後でいい。
問1 家族スタッフのAさんが、ご家族に言われた事の愚痴を話し始めました。この回の原則に沿った聞き方はどれですか。
問2 相手が話している間に、次に言う反論を頭の中で組み立てていました。この状態について正しい説明はどれですか。
問3 レンタルスペースの利用者さんから、隣の部屋の音がうるさかったと苦情がありました。こちらは防音をしています。最初の対応として近いのはどれですか。
問4 「聞き手にまわる」について、この回の説明に合うものはどれですか。
出典:D・カーネギー『人を動かす』の原則(「聞き手にまわる」)をもとに、独自の言葉と例で再構成。例はすべて架空です。