人を動かす講座(カーネギーの原則を、小さな会社の現場で使う)

区分3 相手に納得してもらう★★★

No.11 間違いを指摘しない・自分の間違いはすぐ認める

相手の間違いと自分の間違いを、関係を壊さずに扱うための回です。★3の毎日のように出番がある原則なので、しっかりやります。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 要点
  3. 第2章 なぜ効くのか
  4. 第3章 日常・仕事の例
  5. 第4章 今日の小さな実践
  6. 確認問題

第0章 前提知識

① 指摘する :「あなたは間違っている」と相手に向けて言うこと

この単元で避けたいのは、相手の間違いを正面から突きつける言い方です。 「それ、違いますよ」「間違ってます」のように、相手を主語にして誤りを言い渡す形です。

似た言葉に「確かめる」があります。 確かめるは、記録や画面などの事実を、相手と一緒に見直すことです。 誤りを放っておくのではなく、突きつけずに一緒に確かめる。 この単元は、ここが中心になります。

② 認める :自分の誤りを、言い訳より先に自分から口にすること

「認める」と「謝る」は、少し違います。 謝るは「すみません」と気持ちを伝えることで、認めるは「ここを間違えました」と中身を言うことです。

謝っても、何を間違えたかを言わなければ、相手はすっきりしません。 逆に、中身をはっきり認めれば、謝罪の言葉が短くても伝わります。

③ 顔をつぶす :人前で恥をかかせ、相手の面子(メンツ)を失わせること

間違いの指摘は、この「顔をつぶす」と結びつきやすい行為です。 誤りそのものより、人前で誤りを言われたことの方が、相手の心に長く残ります。

第1章 要点

① 「間違っています」と正面から言わない 必ず覚える

相手が間違っていると思っても、「あなたが間違っている」とは言いません。 代わりに、自分の側に疑いを置いて切り出します。

「私の勘違いかもしれないので、一緒に確かめてもいいですか」

この一言で、話は「どちらが間違っているか」から「事実はどうか」に移ります。 もし本当にあなたの勘違いだったら、そのまま引けばいいだけです。 相手が間違っていた時も、相手は自分で気づく形になるので、顔をつぶさずに済みます。

ただし、ご利用者さんの安全や事故につながる誤りは、その場で止めます。 止めるのは迷わずに、理由の話は後で、人のいない所でします。 指摘しないとは、見過ごすことではありません。

② 自分の誤りは、相手より先に、早く認める 必ず覚える

自分が間違えた時は、相手に言われる前に、自分から認めます。 早ければ早いほど、話は小さく済みます。

認める時は、次の3つを、この順番で言います。

  1. 何を間違えたか(中身をはっきり)
  2. 相手にどんな迷惑をかけたか
  3. これからどうするか

言い訳や事情の説明は、言うとしても最後に短くです。 最初に事情を話すと、相手には「認めていない」と聞こえてしまいます。

③ 事実を一緒に見る形にする さらっと

間違いを扱う時は、人と人が向かい合うのではなく、2人で同じ物を見ます。 記録や予約の画面、メールの文面や商品の説明ページなどです。

「ここを一緒に見てもらえますか」と言うと、相手の目は人から事実に移ります。 誤りがどちらにあっても、責める・責められるの関係にならずに済みます。

④ 自分の誤りでない所まで認めない 深追いしない

すぐ認めるのは、本当に自分が間違えた所だけです。 もめるのが嫌で、自分の責任でない所まで「こちらのミスです」と言うと、後で話がこじれます。

特にお金や契約に関わる話は、事実を確かめてから認めます。 「確認してすぐにご連絡します」と言って、時間をもらうのは逃げではありません。

第2章 なぜ効くのか

① 指摘されると、間違いを認めることが「負け」になる

人は、自分から間違いに気づいた時は、わりと素直に直せます。 ところが人から突きつけられると、認めることが「相手に負けること」に変わります。

そうなると、間違いを直すより、自分を守る方が大事になります。 明らかな誤りでも、言い訳を探したり、話をそらしたりし始めるんです。 正面からの指摘は、誤りを直す近道に見えて、実は遠回りになります。

② 先に認められると、責める理由がなくなる

相手があなたのミスで怒っている時、相手は「どう責めようか」と考えています。 そこへあなたが先に、中身をはっきり認めると、相手は言おうとしていたことを先に言われてしまいます。

責める理由がなくなった人は、攻撃の勢いを保てません。 むしろ「そこまで言わなくてもいいですよ」と、気持ちがやわらぐことが多いです。 言い訳をすると、相手は「まだ分かっていない」と感じて、さらに強く責めてきます。

③ 上の立場の人が認めると、周りも認めやすくなる

経営者のあなたが自分の誤りをすぐ認めると、スタッフは「ここでは間違えても言っていい」と感じます。 すると、小さなミスの報告が早く上がるようになります。

反対に、上の人が誤りを認めない職場では、下の人もミスを隠します。 介護の現場では、小さなミスの報告が遅れることが、大きな事故につながりかねません。 あなたが認める速さは、職場の安全にもつながっているんです。

第3章 日常・仕事の例

① ケアマネさんの勘違いを、顔をつぶさずに正す

ケアマネさん(ケアマネジャー:介護サービスの計画を立てる担当者)から、訪問の曜日について連絡がありました。 あなたの記録では、その曜日は先月から変わっています。

ダメな言い方: 「それ、先月変わってますよ。お伝えしましたよね」

相手を主語にして誤りを言い渡しています。 ケアマネさんは、恥をかかされたと感じるかもしれません。

言い換え: 「こちらの記録だと、先月から火曜日に変わっていることになっているんです。私の記録違いかもしれないので、お手元の計画と一緒に照らし合わせてもいいですか」

事実は同じですが、疑いを自分の側に置き、2人で見る形にしています。 どちらの記録が正しくても、関係は傷つきません。

② 購入者さんへの案内ミスを、先に認める

AIコンテンツの購入者さんから、「案内されたページが開けない」と問い合わせが来ました。 調べると、こちらが送ったメールのリンクが古いままでした。

ダメな返信: 「システムの都合で一部リンクが変更になっておりました。お手数ですが、こちらのURLからお試しください」

事情の説明から始まり、こちらの誤りがぼかされています。 購入者さんは、自分の手間に誰も責任を持っていない、と感じます。

言い換え: 「お送りしたメールのリンクが古いままになっていました。こちらの確認不足です。開けずにお手間をおかけして、申し訳ありません。正しいリンクはこちらです。同じ内容のほかの購入者さんにも、今日中に正しいリンクをお送りします」

何を間違えたか・どんな迷惑をかけたか・これからどうするか、の順番で書いています。 言い訳は入れていません。

③ 子どもに間違ったことを教えていた

子どもの宿題を見ていて、昨日あなたが教えた解き方が間違っていたことに気づきました。 子どもはもう、その解き方で何問か解いています。

ダメな対応: 黙って、こっそり正しい解き方に誘導する。

親の面子を守ったつもりでも、子どもは何が起きたか分からず、混乱します。

言い換え: 「ごめん、昨日教えた解き方、お父さんが間違えてた。こっちが正しいんだ。解き直すの手伝うね」

親が自分の誤りをすぐ認める姿は、子どもにとって「間違えたら言えばいい」という見本になります。 この姿勢は、家族スタッフに対しても同じです。

第4章 今日の小さな実践

今日、自分の小さな誤りに1つ気づいたら、相手に言われる前に自分から言います。

「さっきの〇〇、私が間違えていました。△△に直します」

予定の伝え間違い、頼み忘れ、言い方がきつかったことでも構いません。 大きな失敗を待つ必要はありません。

1日の終わりに、振り返りシートの「使った原則」に「No.11」と書き、実際に言った一言を書き残します。 「相手の反応」の欄には、相手の表情や返事がどう変わったかを書いてください。

○ よくある勘違い:間違いを指摘しない=間違いを放っておく、ではありません。安全に関わる誤りはその場で止めます。変えるのは、突きつけるか一緒に確かめるかという言い方です
○ 関係する単元:No.01(人を責めない)と根は同じです。自分の失敗を先に話してから注意する方法は、No.15(後で出ます)で扱います

相手の誤りは「私の勘違いかもしれないので、一緒に確かめても?」で切り出す。自分の誤りは言われる前に、何を間違えたか・迷惑・これから、の順で認める。言い訳は後回し。

確認問題

問1 ケアマネさんから届いた訪問の曜日の連絡が、こちらの記録と食い違っています。本文に近い切り出し方はどれですか。

問2 購入者さんに送ったリンクが古いままでした。返信の書き出しとして、本文に近いものはどれですか。

問3 自分のミスで相手が怒っている時に、先に中身をはっきり認めると、なぜ相手の気持ちがやわらぎやすいのですか。

問4 スタジオの利用者さんから、料金の請求が二重になっていると強い口調で言われました。まだ記録を確認していません。本文に近い対応はどれですか。

出典:D・カーネギー『人を動かす』の原則(「誤りを指摘しない」「誤りを認める」)をもとに、独自の言葉と例で再構成。例はすべて架空です。