人を動かす講座(カーネギーの原則を、小さな会社の現場で使う)
区分3 相手に納得してもらう★★言いにくい話ほど、人は身構えて、強い調子で切り出してしまいます。 「ちょっといいですか。困るんですよね」のような始め方です。
穏やかに入るとは、内容を薄めることではありません。 言う内容は同じまま、最初の声の調子と言葉を落ち着かせることです。
「〇〇さんも、〜は大事だと思われますよね」のように、2人の間で一致している所を確かめる問いです。 意見が分かれている所ではなく、分かれていない所から話を始めます。
似た物に「誘導尋問」があります。 答えの決まった問いで相手を追い込み、逃げ道をなくすやり方です。 この単元の問いは、追い込むためではなく、2人の足場をそろえるために使います。
話の最初に相手が身構えると、その後どんなに正しいことを言っても届きにくくなります。 最初の一言は、内容より調子が大事です。
穏やかに入るために、次の3つを意識します。
怒っている相手に対しても同じです。 相手が強い調子でも、こちらは落ち着いた調子を保ちます。
意見が分かれている時ほど、まず一致している所を口にします。 目的・大事にしているもの・事実のどれかは、たいてい一致しています。
まず、2人が「はい」と言える所を探す。
「はい」が1つ出たら、そこから少しずつ話を進めます。 いきなり結論に飛ばず、相手がうなずける所を積み上げていくんです。
「はい」と言わせることが目的になると、誘導尋問になります。 相手は途中で「はめられた」と気づき、信頼をなくします。
確かめる問いは、本当に2人が一致している事だけにします。 相手が「いいえ」と言ったら、そこは一致していなかったということです。 その時は、相手の考えを聞く方に切り替えます。
人は、一度口にしたことを変えるのが苦手です。 話の最初に「いいえ」「でも」と言った人は、その後も「いいえ」の立場を守ろうとします。
逆に、最初に「はい」と言えた人は、気持ちが開いています。 開いた状態で聞く話は、同じ内容でも受け取りやすくなります。
意見が違う時、相手はあなたを「反対側の人」として見ています。 そこで同じ目的を確かめると、相手の中であなたの位置が変わります。
「この人は、自分と同じものを大事にしている」と感じると、相手は身構えをときます。 話の中身に入るのは、その後で十分です。
予約システムの不具合で、同じ時間に2組の予約が入ってしまいました。 後から来た利用者さんが、強い口調で怒っています。
ダメな入り方: 「すみません、システムの問題でして。こちらとしてもどうしようもなくて」
言い訳から入ると、相手はさらに身構えます。
言い換え: 「せっかく時間を作って来てくださったのに、本当に申し訳ありません。今日の練習は、予定どおりにできることが一番ですよね」 (利用者さん:そうですよ) 「別の部屋を今から用意できます。広さは同じくらいです。そちらで始めていただくのはいかがでしょう」
穏やかに入り、「練習ができることが一番」という一致から話を進めています。 怒りの中身にまず寄り添ってから、具体案を出しています。
ご利用者さんの体の状態に合わせて、サービスの内容を変える提案をしたい場面です。 ご家族は、今のやり方に慣れていて、変えることに前向きではありません。
ダメな入り方: 「今のままだと危ないので、内容を変えないといけません」
最初に「危ない」「いけない」と言われると、ご家族は責められたように感じます。
言い換え: 「いつもお母さまのことを気にかけてくださって、ありがとうございます。お母さまが、ご自宅で安心して過ごせることが一番ですよね」 (ご家族:はい、それはもちろん) 「最近、立ち上がる時に少しふらつかれることがあります。安心して過ごしていただくために、手すりのある所での介助を増やす形を、一緒に考えさせていただけませんか」
ご利用者さんを大切に思う気持ちは、ご家族もあなたも同じです。 そこを確かめてから、事実と提案を出しています。
外注のデザイナーさんから届いた画像が、思っていた方向と違いました。
ダメな入り方: 「イメージと違うので、作り直してください」
言い換え: 「早めに仕上げてくださって、ありがとうございます。購入者さんが、ぱっと見て内容が分かる画像にしたい、という所は同じ考えですよね」 (デザイナーさん:はい) 「そのために、文字をもう少し大きくして、色数を減らす方向を試していただけますか」
相手の仕事への感謝と、共通の目的から入っています。 修正の中身は同じでも、相手は「否定された」とは感じにくくなります。
今日、言いにくいことを伝える場面が1回あったら、本題の前にこの2つを入れます。
本題は、相手が「はい」と言ってからにします。 1日の終わりに、振り返りシートに「No.12」と、実際に言った最初の一言を書いてください。
○ よくある勘違い:「はい」と言わせる数を増やせば、相手は断れなくなる、と考えるのは誤りです。それは誘導尋問で、気づかれた時に信頼をなくします。確かめるのは、本当に一致している事だけです
○ 関係する単元:No.10(議論で勝とうとしない)と組み合わせると、言い合いになる前に足場をそろえられます
言いにくい話ほど、声を落として感謝か事実から入る。本題の前に、2人が「はい」と言える目的を1つ確かめる。追い込むための「はい」は使わない。
問1 予約が二重に入ってしまい、スタジオの利用者さんが強い口調で怒っています。最初の一言として、本文に近いものはどれですか。
問2 「はい」と言える問いを使う時に、本文が注意していることはどれですか。
問3 話の最初に相手が「いいえ」と言うと、なぜその後の話が進みにくくなるのですか。
出典:D・カーネギー『人を動かす』の原則(「穏やかに話す」「イエスと答えられる問題を選ぶ」)をもとに、独自の言葉と例で再構成。例はすべて架空です。