人を動かす講座(カーネギーの原則を、小さな会社の現場で使う)
区分5 現場で回す★★★卒業課題は、職場で1人を選び、決めた原則3つを2週間使い続ける課題です。 終わったら振り返りシートで採点し、次の1手を決めます。 原則は1回使っただけでは、相手との関係はほとんど変わりません。 続けることで、相手の中の「この人はこういう人」という見方が少しずつ変わっていきます。
振り返りシートは、その日のやり取りを3分で書き残す用紙です。 卒業課題の間は、選んだ相手との1日を書きます。 卒業した後も、毎日の実践ワークとして使い続けます。
課題シートは、卒業課題を始める日に1回だけ書く表です。 振り返りシートとの違いは、書く時と回数です。 課題シートは最初に1枚、振り返りシートは毎日1枚書きます。 課題シートが地図で、振り返りシートが毎日の現在地の記録、と考えると分かりやすいと思います。
相手は、次の3つに当てはまる人から1人選びます。
3つ目には理由があります。 最初の2週間から一番難しい相手を選ぶと、うまくいかない日が続いて、原則そのものを疑いたくなるからです。 家族スタッフのように、毎日会い、少しぎくしゃくしている程度の相手がちょうどいいです。
もう1つ、大事な約束があります。 卒業課題は、相手を変えるための課題ではありません。 変えるのは、相手への自分の態度です。 相手を試したり、反応を見て遊んだりする「実験台」として扱わないでください。 この講座の原則は、相手を本当に尊重するための習慣です。 相手の役に立ちたい、関係を良くしたいという気持ちが前提にない時は、相手を選び直します。
3つのうち1つは、必ず区分1から選びます。 区分1は、No.01 責めない/No.02 心から認める/No.03 相手の欲しいものから話す、の3つです。 後の全部の原則の根っこなので、ここが抜けると残りの2つが小手先になってしまいます。
残りの2つは、その相手との困りごとに合う区分から選びます。
| 困りごと | 選ぶ区分 | 例 |
|---|---|---|
| 話がぎこちない。距離がある | 区分2 好かれる人になる | No.07 聞き手にまわる |
| 意見がぶつかる。説得しても動かない | 区分3 相手に納得してもらう | No.13 相手に話させる |
| 注意すると不機嫌になる。頼みごとが通らない | 区分4 人を育てる・注意する | No.16 問いかけ |
迷ったら、No.19の比較表でその相手の行を見て、そこから選んでも構いません。 選んだら、原則ごとに「実際に言う一言」を1つずつ決めておきます。 原則の名前だけだと、現場で何を言えばいいか分からなくなるからです。
2週間は、次の流れで進めます。
7日目の見直しで、3つ全部を入れ替えないのがこつです。 全部替えると、何が効いて何が効かなかったのかが分からなくなります。
課題シートは、次の6つの欄です。
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 1 相手 | 役割名で書く(例:家族スタッフのAさん) |
| 2 なりたい関係 | 2週間後、どんな関係になっていたいか。1行で |
| 3 今の困りごと | 自分から見て困っていること。相手の悪口ではなく、場面で書く |
| 4 原則3つと一言 | 区分1から1つ、困りごとに合う区分から2つ。それぞれ実際に言う一言 |
| 5 やらないこと | この相手につい言ってしまう言葉を1つ。2週間は言わない |
| 6 始める前の点数 | 原則ごとに、今どのくらい使えているかを1〜5点で |
欄6の点数は、14日目に比べるための物です。 低くても気にせず、正直に付けてください。
| 欄 | 書くこと | 書き方のこつ |
|---|---|---|
| 1 今日の相手と場面 | 役割名と場面(例:家族スタッフのAさん・朝の申し送り) | 場面は1つに絞る |
| 2 使った原則と一言 | 原則の番号と、実際に言った一言 | 言ったとおりの言葉で書く |
| 3 相手の反応 | 表情・言葉・その後の動き | 見たことだけを書き、相手の気持ちを決めつけない |
| 4 やってしまったこと | 責めた・言い負かした・命令した、など | 正直に書く |
| 5 自分の態度の点数 | 1〜5点。責めずに、相手の立場から話せたか | 相手の反応ではなく、自分の態度で付ける |
| 6 次の1手 | 明日、同じ相手に1つだけ変えること | 1つに絞る |
欄3の「見たことだけ」は、思ったより大事です。 「やる気がなさそうだった」と書くと、それはもう相手への決めつけになっています。 「返事が短かった」「その後すぐに記録を書き始めた」のように、目に見えた事実で書きます。
忙しい日は、欄6だけで構いません。 欄6が、翌日のあなたの最初の一言を決めるからです。
変えることは1つに絞ります。 3つ直そうとすると、翌日に1つも思い出せなくなります。 書いた欄6は、翌朝その相手に会う前に読み返してください。
欄4には、うまくできなかったことをそのまま書きます。 ここを空けたくなる日ほど、何かがあった日です。
ただし、書いた後で自分を責める必要はありません。 相手を責めないのと同じで、自分を責めても翌日は良くなりません。 うまくいかなかった日の正直な1行が、次の1手の材料になります。
○ 相手の名前・住所・連絡先・健康状態・家庭の事情など、個人の情報はシートに書きません。役割名にとどめます
○ 相手を困らせて反応を見る、わざと試す、といった使い方はしません。原則は相手を尊重するための習慣です
○ 関係する単元:No.01(人を責めない)、No.19(場面別の比較表)
架空の例です。 あなたの職場の相手と場面に置き換えて使ってください。
課題シート(例)
振り返りシート 1日目(例)
振り返りシート 7日目(例)
7日目の見直し:No.01とNo.16は続けられている。No.17はその日のうちに言えない日が多い。原則は入れ替えず、No.17の一言を「その場で言う」に変える。
振り返りシート 14日目(例)
14日目の採点(例)
次の3つがそろったら卒業です。
相手がどう変わったかは、条件に入りません。 相手は思いどおりに動かす対象ではないからです。 条件に入るのは、あなたが2週間続けて、振り返りで直したかどうかです。
14日目に、選んだ原則ごとに1〜5点を付けます。 基準は次のとおりです。
| 点数 | 目安 |
|---|---|
| 1点 | ほとんど使えなかった |
| 2点 | 思い出せたが、言えたのは数回 |
| 3点 | 半分くらいの日に言えた |
| 4点 | ほとんどの日に、意識して言えた |
| 5点 | 意識しなくても自然に出た |
点数の根拠は、振り返りシートの欄2と欄4から拾います。 欄2に何回出てきたか、欄4に何回「やってしまった」が出たかを数えれば、思い出だけで付けるより正確になります。 付けたら、課題シートの欄6(始める前の点数)と並べて見ます。
次の1手は1つだけ決めます。 決め方は2通りあります。 点がいちばん低い原則の一言を変えるか、よく効いた原則を別の相手にも使ってみるかです。
卒業した後も、振り返りシートは1日の終わりに3分で書き続けます。 うまくいかない日が続いたら、区分1(No.01〜03)に戻って読み直してください。
最初の一歩は、今日のうちに課題シートの欄1と欄4だけ書くことです。 相手を1人と原則3つが決まれば、明日の朝から始められます。
1人を選び、区分1から1つ・困りごとに合う区分から2つの原則を決めて、2週間使う。毎日、振り返りシートの欄6「次の1手」だけは書く。14日目に原則ごとに1〜5点を付け、次の1手を1つ決める。
問1 卒業課題で使う原則を3つ選びます。選び方として本文に合うものはどれですか。
問2 仕事が立て込んで、振り返りシートを全部書く時間がない日があります。最低限、どこを書けばよいですか。
問3 振り返りシートの欄3「相手の反応」の書き方として、本文に合うものはどれですか。
問4 2週間が終わりました。相手の様子はあまり変わりませんでしたが、毎日シートを書き、14日目に採点して次の1手も決めました。卒業の扱いはどうなりますか。
出典:D・カーネギー『人を動かす』の原則(「人を責めない」「心から認める」「相手の立場に立つ」「命令ではなく問いかける」「小さな進歩をほめる」など)をもとに、独自の言葉と例で再構成。例はすべて架空です。