人を動かす講座(カーネギーの原則を、小さな会社の現場で使う)

区分5 現場で回す★★★

No.20 卒業課題と振り返りシート

卒業課題です。新しい原則は出てきません。2週間・1人・原則3つを実際の職場で回し、振り返りシートで採点して次の1手を決める、講座の出口になる回です。★3で、しっかりやります。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 卒業課題の進め方
  3. 第2章 振り返りシートの書き方
  4. 第3章 記入例
  5. 第4章 卒業の条件と、2週間後の採点
  6. 確認問題

第0章 前提知識

① 卒業課題 :2週間、1人の相手に、原則3つを使い続けること

卒業課題は、職場で1人を選び、決めた原則3つを2週間使い続ける課題です。 終わったら振り返りシートで採点し、次の1手を決めます。 原則は1回使っただけでは、相手との関係はほとんど変わりません。 続けることで、相手の中の「この人はこういう人」という見方が少しずつ変わっていきます。

② 振り返りシート :1日の終わりに3分で書く、6つの欄の記録

振り返りシートは、その日のやり取りを3分で書き残す用紙です。 卒業課題の間は、選んだ相手との1日を書きます。 卒業した後も、毎日の実践ワークとして使い続けます。

③ 課題シート :始める前に1回だけ書く、2週間の計画

課題シートは、卒業課題を始める日に1回だけ書く表です。 振り返りシートとの違いは、書く時と回数です。 課題シートは最初に1枚、振り返りシートは毎日1枚書きます。 課題シートが地図で、振り返りシートが毎日の現在地の記録、と考えると分かりやすいと思います。

第1章 卒業課題の進め方

① 相手の選び方 必ず覚える

相手は、次の3つに当てはまる人から1人選びます。

3つ目には理由があります。 最初の2週間から一番難しい相手を選ぶと、うまくいかない日が続いて、原則そのものを疑いたくなるからです。 家族スタッフのように、毎日会い、少しぎくしゃくしている程度の相手がちょうどいいです。

もう1つ、大事な約束があります。 卒業課題は、相手を変えるための課題ではありません。 変えるのは、相手への自分の態度です。 相手を試したり、反応を見て遊んだりする「実験台」として扱わないでください。 この講座の原則は、相手を本当に尊重するための習慣です。 相手の役に立ちたい、関係を良くしたいという気持ちが前提にない時は、相手を選び直します。

② 原則3つの選び方 必ず覚える

3つのうち1つは、必ず区分1から選びます。 区分1は、No.01 責めない/No.02 心から認める/No.03 相手の欲しいものから話す、の3つです。 後の全部の原則の根っこなので、ここが抜けると残りの2つが小手先になってしまいます。

残りの2つは、その相手との困りごとに合う区分から選びます。

困りごと 選ぶ区分 例
話がぎこちない。距離がある 区分2 好かれる人になる No.07 聞き手にまわる
意見がぶつかる。説得しても動かない 区分3 相手に納得してもらう No.13 相手に話させる
注意すると不機嫌になる。頼みごとが通らない 区分4 人を育てる・注意する No.16 問いかけ

迷ったら、No.19の比較表でその相手の行を見て、そこから選んでも構いません。 選んだら、原則ごとに「実際に言う一言」を1つずつ決めておきます。 原則の名前だけだと、現場で何を言えばいいか分からなくなるからです。

③ 2週間の流れと課題シート 必ず覚える

2週間は、次の流れで進めます。

7日目の見直しで、3つ全部を入れ替えないのがこつです。 全部替えると、何が効いて何が効かなかったのかが分からなくなります。

課題シートは、次の6つの欄です。

欄 書くこと
1 相手 役割名で書く(例:家族スタッフのAさん)
2 なりたい関係 2週間後、どんな関係になっていたいか。1行で
3 今の困りごと 自分から見て困っていること。相手の悪口ではなく、場面で書く
4 原則3つと一言 区分1から1つ、困りごとに合う区分から2つ。それぞれ実際に言う一言
5 やらないこと この相手につい言ってしまう言葉を1つ。2週間は言わない
6 始める前の点数 原則ごとに、今どのくらい使えているかを1〜5点で

欄6の点数は、14日目に比べるための物です。 低くても気にせず、正直に付けてください。

第2章 振り返りシートの書き方

① 6つの欄 必ず覚える

欄 書くこと 書き方のこつ
1 今日の相手と場面 役割名と場面(例:家族スタッフのAさん・朝の申し送り) 場面は1つに絞る
2 使った原則と一言 原則の番号と、実際に言った一言 言ったとおりの言葉で書く
3 相手の反応 表情・言葉・その後の動き 見たことだけを書き、相手の気持ちを決めつけない
4 やってしまったこと 責めた・言い負かした・命令した、など 正直に書く
5 自分の態度の点数 1〜5点。責めずに、相手の立場から話せたか 相手の反応ではなく、自分の態度で付ける
6 次の1手 明日、同じ相手に1つだけ変えること 1つに絞る

欄3の「見たことだけ」は、思ったより大事です。 「やる気がなさそうだった」と書くと、それはもう相手への決めつけになっています。 「返事が短かった」「その後すぐに記録を書き始めた」のように、目に見えた事実で書きます。

② 欄6は必ず書く 必ず覚える

忙しい日は、欄6だけで構いません。 欄6が、翌日のあなたの最初の一言を決めるからです。

変えることは1つに絞ります。 3つ直そうとすると、翌日に1つも思い出せなくなります。 書いた欄6は、翌朝その相手に会う前に読み返してください。

③ 正直に書く 必ず覚える

欄4には、うまくできなかったことをそのまま書きます。 ここを空けたくなる日ほど、何かがあった日です。

ただし、書いた後で自分を責める必要はありません。 相手を責めないのと同じで、自分を責めても翌日は良くなりません。 うまくいかなかった日の正直な1行が、次の1手の材料になります。

○ 相手の名前・住所・連絡先・健康状態・家庭の事情など、個人の情報はシートに書きません。役割名にとどめます
○ 相手を困らせて反応を見る、わざと試す、といった使い方はしません。原則は相手を尊重するための習慣です
○ 関係する単元:No.01(人を責めない)、No.19(場面別の比較表)

第3章 記入例

架空の例です。 あなたの職場の相手と場面に置き換えて使ってください。

課題シート(例)

振り返りシート 1日目(例)

振り返りシート 7日目(例)

7日目の見直し:No.01とNo.16は続けられている。No.17はその日のうちに言えない日が多い。原則は入れ替えず、No.17の一言を「その場で言う」に変える。

振り返りシート 14日目(例)

14日目の採点(例)

第4章 卒業の条件と、2週間後の採点

① 卒業の条件 必ず覚える

次の3つがそろったら卒業です。

相手がどう変わったかは、条件に入りません。 相手は思いどおりに動かす対象ではないからです。 条件に入るのは、あなたが2週間続けて、振り返りで直したかどうかです。

② 2週間後の採点 必ず覚える

14日目に、選んだ原則ごとに1〜5点を付けます。 基準は次のとおりです。

点数 目安
1点 ほとんど使えなかった
2点 思い出せたが、言えたのは数回
3点 半分くらいの日に言えた
4点 ほとんどの日に、意識して言えた
5点 意識しなくても自然に出た

点数の根拠は、振り返りシートの欄2と欄4から拾います。 欄2に何回出てきたか、欄4に何回「やってしまった」が出たかを数えれば、思い出だけで付けるより正確になります。 付けたら、課題シートの欄6(始める前の点数)と並べて見ます。

③ 次の1手と、その後 さらっと

次の1手は1つだけ決めます。 決め方は2通りあります。 点がいちばん低い原則の一言を変えるか、よく効いた原則を別の相手にも使ってみるかです。

卒業した後も、振り返りシートは1日の終わりに3分で書き続けます。 うまくいかない日が続いたら、区分1(No.01〜03)に戻って読み直してください。

最初の一歩は、今日のうちに課題シートの欄1と欄4だけ書くことです。 相手を1人と原則3つが決まれば、明日の朝から始められます。

1人を選び、区分1から1つ・困りごとに合う区分から2つの原則を決めて、2週間使う。毎日、振り返りシートの欄6「次の1手」だけは書く。14日目に原則ごとに1〜5点を付け、次の1手を1つ決める。

確認問題

問1 卒業課題で使う原則を3つ選びます。選び方として本文に合うものはどれですか。

問2 仕事が立て込んで、振り返りシートを全部書く時間がない日があります。最低限、どこを書けばよいですか。

問3 振り返りシートの欄3「相手の反応」の書き方として、本文に合うものはどれですか。

問4 2週間が終わりました。相手の様子はあまり変わりませんでしたが、毎日シートを書き、14日目に採点して次の1手も決めました。卒業の扱いはどうなりますか。

出典:D・カーネギー『人を動かす』の原則(「人を責めない」「心から認める」「相手の立場に立つ」「命令ではなく問いかける」「小さな進歩をほめる」など)をもとに、独自の言葉と例で再構成。例はすべて架空です。