人を動かす講座(カーネギーの原則を、小さな会社の現場で使う)

区分2 好かれる人になる★★

No.08 相手の関心ごとを話題にする

自分が話したいことより、相手が熱くなれる話題を選ぶ回です。★2、雑談や初対面の場で使います。前の回までの「関心を持つ」「聞く」を、話題選びに当てはめる回なので、軽めに進めます。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 要点
  3. 第2章 なぜ効くのか
  4. 第3章 日常・仕事の例
  5. 第4章 今日の小さな実践
  6. 確認問題

第0章 前提知識

① 関心ごと :相手が時間や気持ちを注いでいて、話し出すと声が明るくなる事

関心ごとは、仕事とは限りません。 趣味や家族、育てている植物、応援しているチーム、今がんばっている練習などです。 その人が、頼まれなくても時間を使っている事です。

見分ける目安は、話している時の声です。 関心ごとの話になると、声が明るくなり、話す速さが少し上がります。

② 「話を合わせる」「知ったかぶり」との違い

相手の関心ごとを話題にするとは、相手を話の中心に置くことです。 詳しくない事を詳しいふりをしたり、自分も好きだと嘘をついたりすることではありません。

知らない事は、知らないと言って構いません。 知ったかぶりは、話が深くなった所で必ず崩れます。 そうなると、関心があるふりをしていたと受け取られてしまいます。

第1章 要点

① 相手が熱くなれる話題を選ぶ 必ず覚える

雑談になると、多くの人は自分が話しやすい事を話します。 自分の最近の出来事、自分の仕事の話、自分の得意な分野。

話題は、自分が話したい事ではなく、相手が話したくなる事から選びます。 相手が熱くなれる話題なら、こちらは聞いているだけで会話が弾みます。

② 関心ごとの見つけ方 必ず覚える

相手の関心ごとは、たいてい目に見える所に出ています。 探す手がかりは3つです。

  1. 持ち物や部屋の飾り(写真、キーホルダー、壁のポスター、使い込んだ道具)
  2. 話の中で何度も出てくる事(「うちの孫が」「この前の試合で」)
  3. 声が明るくなる所(話している途中で、急に表情が変わる所)

見つけたら「それ、もう少し聞いてもいいですか」と、そこへ話を寄せます。

③ 知らない分野は「教えてください」でいい さらっと

相手の関心ごとが、自分の知らない分野だったとします。 その時は、知らないまま正直に聞けば十分です。

「私はまったく分からないんですが、どこが面白いんですか」と聞かれると、たいていの人はうれしそうに話してくれます。 好きな事を教える側に立つのは、気分のいいことだからです。

第2章 なぜ効くのか

① 好きな事を話している時の気分は、相手と結びつく

人は、自分の好きな事を話している時、気分が上がります。 そして、その時の気分は、話を聞いてくれた相手の印象と結びつきます。

だから、相手の関心ごとを話題にした人は、「話していて楽しい人」として覚えられます。 こちらが何か面白い事を言ったわけではなくても、そうなるんです。

② 覚えていてくれたことが、関心の証になる

前に話した好きな事を、次に会った時に相手から聞かれると、人はうれしくなります。 「あの話を覚えていてくれたんだ」と感じるからです。

相手に本気で関心を持つ原則(No.04)は、目に見えにくいものです。 関心ごとを話題にすることは、その関心を相手に見える形にする方法でもあります。

第3章 日常・仕事の例

① スタジオの常連さん

レンタルスペースの常連さんが、最近いつもより長く練習しています。

ダメな話題: 「最近、新しい鏡を入れたんですよ。照明も変えて」と、スタジオの設備の話を続ける。

言い換え: 「最近、練習の時間が長いですね。何か本番が近いんですか」と聞く。 発表会があると分かれば、次に来た時に「発表会まであと少しですね」と声をかける。

設備の話も、相手の発表会の話につなげれば届きます。 「本番前に通しで使いたい時は、広い部屋も空いていますよ」のように、相手の話題の中で伝えます。

② ご利用者さんの好きな歌

訪問介護のご利用者さんの部屋に、昔の歌手のレコードが並んでいます。

ダメな話題: 天気の話か、体調の確認だけで、作業の時間が終わる。

言い換え: 「このレコード、よく聴かれるんですか」と聞いてみる。 好きな歌が分かったら、次の訪問で「今日はあの歌、聴かれましたか」と話しかける。

体調の確認は大事な仕事です。 その合間に、その人が好きな事の話が1つ入るだけで、訪問の時間の空気が変わります。 話したくなさそうな日は、無理に広げません。

③ 外注さんとの雑談

AIコンテンツのイラストを頼んでいる外注さんと、オンラインで打ち合わせをする場面です。

ダメな話題: 最初から最後まで、こちらの商品の売れ行きと次の予定の話をする。

言い換え: 打ち合わせの最初に、「この前の作品集に入っていた風景の絵、すごく好きでした。ああいう絵は、普段から描かれているんですか」と聞く。

外注さんにとっては、仕事の注文主から自分の作品そのものに目を向けてもらえた場面になります。 その後の打ち合わせも、話しやすい空気で進みます。

④ 子どものゲームの話

子どもが、夢中になっているゲームの話をしてきた場面です。

ダメな返し方: 「またゲームの話? それより宿題は終わったの」と、自分の話したい事に切り替える。

言い換え: 「そのゲーム、どこがいちばん面白いの?」と聞いて、少しの間だけ子どもの話に付き合う。 宿題の話は、その後でも遅くありません。

子どもにとってゲームは、今いちばん熱くなれる事です。 その話を聞いてもらえた子どもは、親の話にも耳を傾けやすくなります。

○ よくある勘違い:相手の関心ごとを話題にするために、相手のことを調べ上げる必要はありません。目の前の持ち物や、前回の話の中に手がかりはあります。調べすぎると、かえって相手は警戒します
○ 関係する単元:No.07 聞き手にまわる(話題を出したら、あとは聞き手にまわります)

第4章 今日の小さな実践

今日会う人の中から1人選び、前に聞いた「その人の好きな事」を1つ思い出します。 思い出せなければ、持ち物か部屋の飾りから1つ見つけます。

その事を、1回だけ話題にします。 例:「この前のお孫さんの運動会、どうでしたか」 振り返りシートには、話題にした時に相手の声が明るくなったかどうかを書きます。

話題は、自分が話したい事ではなく、相手が話したくなる事から選ぶ。手がかりは、持ち物・何度も出る話・声が明るくなる所。知らない分野は「教えてください」でいい。

確認問題

問1 スタジオの常連さんが、最近いつもより長く練習しています。この回の原則に沿った話しかけ方はどれですか。

問2 外注さんの関心ごとが、自分のまったく知らない分野でした。どうするのがよいですか。

問3 相手の関心ごとを話題にすると、なぜ「話していて楽しい人」と思われるのですか。この回の説明に合うものはどれですか。

出典:D・カーネギー『人を動かす』の原則(「関心のありかを見抜く」)をもとに、独自の言葉と例で再構成。例はすべて架空です。